甲状腺疾患の主な治療について
【橋本病】
ストレスなどにより自己免疫システムが崩れ、免疫細胞が甲状腺を異物として攻撃することで甲状腺に炎症が起こり、首が腫れる疾患です。症状が進むと甲状腺ホルモンの分泌が減り、新陳代謝が低下することから、全身の活力の低下や便秘、体重増加、むくみ、生理不順などの症状があらわれます。40代~50代の女性の患者様が多いことから、更年期障害やうつと間違われることもありますが、甲状腺ホルモンの分泌量を測る血液検査を行なうことで診断できます。
橋本病は、甲状腺の機能は正常な場合が多いため、多くは経過観察となります。症状が進み甲状腺ホルモンの分泌量が低下した際は、定期的な検査を行いつつホルモン剤を服用し、不足分を補う治療を行います。
エコー検査
【バセドウ病】
20代~40代の女性に多くみられ、橋本病とは逆に、甲状腺ホルモンが過剰に作られることで起きる疾患です。新陳代謝が高まることで息切れや動悸、イライラする、疲れやすい、手の震え、汗かき、髪の毛が細くなり抜けやすい、食べても痩せる、眼球突出など、さまざまな症状があらわれます。
治療法は、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬物療法が中心になります。2~3年で症状が落ち着く場合もありますが、薬物療法で重篤な副作用が出た時や改善が見られない場合の選択肢として、甲状腺を切除する甲状腺全摘術かアイソトープ治療があります。
【甲状腺のしこり】
しこりには良性と悪性があり、その多くが良性です。良性のしこりは良性腫瘍と腫瘍によく似た過形成(過剰な細胞分裂によって起こる組織の肥大)があります。悪性腫瘍である甲状腺がんは、約9割が「甲状腺乳頭がん」で、5%程度の割合で「甲状腺濾胞(ろほう)がん」が出現します。
超音波検査と細胞診で検査を行い、がんと診断された際は、手術が基本の治療になります。ただし、「甲状腺乳頭がん」は、進行スピードが比較的遅いため、治療をしなくても良いケースもあります。手術による切除範囲は、がんの進行度とリンパ節転移によりますが、多くの甲状腺がんは進行が遅いため、リンパ節転移をしていても手術の適応になります。再発の危険度の高い進行がんには、全摘後に再発予防を目的としたアイソトープ治療を行なう方法もあります。
アイソトープ治療用カプセル